あおやま伝説

奈良時代・天平勝宝のころ(749年~757年)、相差の鯨山岬の下で、夜になると光るものが現れた。村人たちは「海怪獣ではないか」と噂し、恐れていた。そこで、退治役に、この地に流れ着いて落ち延びた元武士・浜の平という男に白羽の矢が立った。毎夜、男が鯨山岬で見張りをしていると、ついに、光るものの正体が〝クジラの背に乗った観音像〟であることがわかった。男は、クジラが居眠りをしている隙に観音像を取り、仏壇に祀った。ある晩、男は夢をみた。あの観音像が「山に帰りたい。私は荒れ狂う白浜の波を沈めるために、出かけて行った。私は元々、青峰山正福寺の本尊の胎内にいた仏だ。だから、早く山に帰りたい」と訴えるのだ。翌日、男が青峰山正福寺へ確かめに行くと、果たしてそうであった。男は、無事、その寺へ観音像を戻した。それ以来、青峰山正福寺は、海の怒りをしずめてくださる観音様として、海に働くものは一年に一度お参りに行くようになった。